New Airbag Technology by DHV

DHVホームページより、http://www.dhv.de/web/en

エアバッグのニューテクノロジー

 

重力には逆らえない・・・そこでパラグライダーパイロットには 効果的なバックプロテクションが必要となる。残念ながらこの分野でのPG機材開発は必ずしも充分ではない。この数年の間で、バックプロテクターは小型化の流れにあるが、今回テストセンターでの比較評価がなされる前にこのようなミニプロテクターを自らDHVでテストしようと言うメーカーはなかった。今、市場に出ている認定された製品には、落下試験で計測されるポイントにだけプロテクターがあってパイロットの背中の残りの部分には有効なプロテクトがないものもある。LTFではパイロットの太股の上半分から肩までのプロテクターを求めているだけで具体的な衝撃吸収の数値は定めていないので、こういったものでも認定を受けられるのだ。

テイクオフで膨らむまでに時間のかかるエアバッグは、パイロットのプロテクションと安全と言う点においてある意味で退歩である。DHVが2011年に行ったリバーシブルハーネスの試験でも、この点で深刻な問題点が示された。多くのケースでこれらのエアバッグハーネスはテイクオフの最中に実質的なプロテクションとならなかった。これらのテストの後、メーカーの中で唯一スイング社はその製品を改良した。スイング社のコネクトリバーズは柔軟性のある樹脂プレートによる改良がなされ、あらかじめエアバッグが膨らむのを補助するようになった。このプレインフレーションによってこのハーネスは、史上初めて通風なしでLTFプロテクターテストに合格するのに充分な容量を確保した。

 

スカイウオーク社もプレインフレーションの考えをそのカルトCハーネスに取り入れた。テイクオフに先立って、パイロットは2本の小さなファイバーグラス ロッドをハーネスのメイン エアバッグ コンパートメントの上へベルクロで止める必要がある。(これに約20秒かかる。)少し上手にゆすってやることで、エアバッグは完全にプレインフレートし、そのプロテクションはパイロットの肩の上端にまで及ぶ。このハーネスの収納スペースはエアバッグとバルブで繋がり、飛行中はメインエアバッグのエアインテークから空気が流入する。このシステムはとてもよく機能し、このハーネスはLTFのプロテクターテストを通風なしに全て大変良好なエネルギー吸収値で合格した。LTF耐空性認定基準に合致させるためには、通常のエアバッグはテストに際して完全に膨らんでいる必要があった。しかしこのハーネスではその必要はなく、これは、このエアバッグはテイクオフの最中や前方からの空気の流入が減少する垂直落下(緊急パラシュートでの降下)において良好なプロテクションを示す事を意味している。特にこのハーネスで注目されるのは、プロテクトされる範囲がパイロットの肩まであることだ。

ウッディーバレー ハーネスのデザイナーであるシモーネ・カルダーナも同様の考えを持っていた。彼もまた、外部からの通風なしに機能するエアバッグの開発を志した。彼のエアバッグでは、空気流入のための穴は廃止されて、大きな柔らかいスプリングが組み込まれていてエアバッグの底部が押し広げられ、バッグから取り出したときから効果的にプレインフレートする。エアバッグ プロテクションを機能させるためのパイロットの手間は一切なし。LTFプロテクター テストマシンにおけるテストでは大変良好なエネルギー吸収値で合格した。ウッディーバレー社では、DHVが判定した主要なクラッシュ パターンのいくつかに対応するように、そのプロテクターを設計している。パイロットが後ろへ倒れた状態でのクラッシュは垂直でのクラッシュに次いで2番目に多いタイプの事故だ。このタイプのクラッシュへのプロテクションの一助として、ハスカのプロテクターはやや後ろよりのポイントで最も大きくなっている。ただ、スカイウオーク社のカルトCに比べると総合的なプロテクト エリアは小さく、太股の上半分から背中の下半分までだ。背中の上半分へのプロテクションはない。ハスカにはオプションでサイドプロテクターもつけられる。

 

アドバンス社はそのアクセス2エアー ハーネスのセルフインフレーティング プロテクターを改良して、現在、アクセス3エアーとして販売している。バックサポートが不充分だという批判へ対応して、背部の構造を新しくし、これはより安定していて飛べばすぐ気が付くことができる。アドバンス社によると、プロテクターにはまた、内部リブを設ける改良を行い、安定性が増すとともに、必要に応じてプロテクターを交換することが可能になった。アクセス3エアーのプロテクターは古典的なフォームないしムースの構造とエアバッグの中間に位置し、側壁とリブはフォーム素材で作られ、それらに囲まれる空間に空気が充満している。プロテクターの主要部分はとてもコンパクトに収納でき、バッグから取り出すと自動的に膨らみ、すぐにフルプロテクションを発揮する。プロテクション エリアとしては、垂直クラッシュに対応しているだけで、背中など上部へのプロテクションはない。

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写真1:着座姿勢のパイロットに見る背骨の範囲

LWS=背中の下半分・腰の背骨部分、BWS=背中の上半分・胸郭の背骨部分

Steißbein=尾てい骨

ほとんどのプロテクターは、垂直クラッシュでの尾てい骨への直接の衝撃に対して最大のプロテクションを発揮する。

 

 

 

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写真2:スカイウオーク社カルトC

プロテクションは太股の上半分から腰の背骨部分に対応。エアバッグは肩に向けて薄くなっていくが胸郭の背骨部分まで覆っている。このハーネスのプロテクションは垂直クラッシュにも仰向け状態でのクラッシュにも対応している。

 

 

 

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写真3:ウッディーバレー社のハスカ

プロテクターの位置は、垂直クラッシュのほか仰向け状態でのクラッシュにも少し対応している。プロテクションは腰の背骨部分まで覆っている。胸郭の背骨部分への直接のプロテクションはない。

 

 

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写真4:アドバンス社のアクセス3エアー

プロテクションは尾てい骨および腰の背骨部分への垂直クラッシュにのみ対応。仰向け状態でのクラッシュへのプロテクションはない。

 

 

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写真5:3つのハーネスを横に並べ、バックプロテクションの覆う範囲を示す。アドバンス社アクセス3エアー(前)、ウッディーバレー社ハスカ(中)、スカイウオーク社カルトC(後)

 

 

緊急パラシュートの開傘

 

DHVテストパイロットのシモン・ウインクラーがグライフェンブルクにおいてトーマス・グラブナーズのGフォースでスパイラルダイブの状況をシミュレートして緊急パラシュートの開傘テストを行った。トム・グラブナーズの発明品はこのスポーツへの素晴らしい贈り物であり、制御された擬似環境で実際に起こりうる出来事をテストする機会を与えてくれる。Gフォーストレイナーで行った数百回の開傘によって、以下の重要な結論を得た。

「静止状態で吊り下げられたハーネスでの開傘においては、完全に一切の障害を感じてもならず、いささかも特別な力のかけ方やかたさがあってはならない。これは、静止状態での開傘時のわずかな抵抗も、スパイラルダイブのような重力加速度Gの増加があると一気に増大してしまうからだ。緊急パラシュートをハーネスから引き出すさいのちょっとした不具合も許されるべきではない。」

開傘テストは2つの条件で行われた:通常のパイロット姿勢と、パイロットがスパイラルの外側に向けて放り出されているツイストあるいはSATを想定した姿勢である。開傘の方向は常に旋回の外側とし、開傘作業をより困難にした。開傘に使用したのは、これらのハーネスとの適合性を有する、標準的なサイズの(インデペンデンス社アニュラーEVO22)と大サイズの(インデペンデンス社セブンアップ)である。

 

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写真6:このテスト姿勢はパイロットがスパイラルの外側へ放り出されるツイストかSATスパイラルを想定している。緊急パラシュートはスパイラルのGに抗して引き出さなければならない。ウッディーバレー社のハスカではパラシュートコンテナを下向きに傾けていて、カルトCとアクセス3エアーのストレートなコンテナよりもずっと引き出しが容易である。

 

 

2011年にDHVで初のGフォーストレイナーを使った一連の開傘テストでは、ウッディーバレー社の製作が細部に至るまで注意深く作りこまれ、良好な機能性を持つことが注目された。これは新モデルのハスカについても当てはまる:パラシュートコンテナ内部は滑らかに下に向けて広く開口していて、開傘引き出し作業では実質的に抵抗はゼロだ。ツイスト状況下ですら開傘に問題がなかった。最大サイズの緊急パラシュートでは開傘にやや大きな力が必要となる。パラシュートハンドルとデプロイメントバッグをつなぐテープの長さは約16cm。

 

スカイウオーク社のカルトCは横方向へまっすぐ向いた比較的大きなパラシュートコンテナを持つ。製作はハスカほどの表面の滑らかさはない。標準サイズの緊急パラシュートではどちらのシミュレーション条件でも開傘に問題はなかった。大サイズの緊急パラシュートではかなりの抵抗増加があり、特にツイスト状態での開傘は困難になる。パラシュートハンドルは他のモデルよりもハーネスの高い位置に装着されていて、腕の短いパイロットにとっては楽に手が届く。しかしデプロイメントバッグとの接続テープが比較的長くなる(約25cm)と言う弱点にもなっている。

 

アクセス3エアーの筒状のコンテナはややタイトで、適合するパラシュートのサイズに制限がある。このハーネスには適合サイズ7000立方cmまでの専用のデプロイメントバッグがついてくるが、これはテストで使用したインデペンデンス製セブンアップ緊急パラシュートよりも小さい。より小さいアニュラーEVO22では開傘に大きな問題はなかったが、タイトなつくりで他のハーネスよりもより大きな抵抗が生じている。今回テストした3つのハーネスの中でアクセス3エアーの接続テープは1番短い(12cm)。

 

 

 

フライトインプレッション

 

3つのハーネスとも全て脚ベルトはゲットアップが標準装備で、ハスカとカルトCにはTロックのオプションもある。ゲットアップの脚ベルトは座板の比較的後ろの方に取り付けられていて、座った姿勢をとるのが楽になるが、着陸に備えてもう一度体を起こすのには少し手間がかかることになる。グランドハンドリング練習をたくさん行うパイロットにとっては、体の微妙な部分への食い込みがそれほどでもないので、Tロックの方がより快適に感じるかもしれない。どのハーネスもフライトした感じで特に変わったところはなく、スクールやノービスのパイロットに全て適したものである。スカイウオークのカルトCはカラビナの取付位置が39cmと一番低く座板から胸ベルトの高さは35cmだ。これに比べてハスカはずっと高い43cmのカラビナ高さ、38cmの胸ベルト高さとなっている。この違いは飛行中にはっきり出て、ハスカは動きがおさえられ、カルトCはより動きが出る。アクセス3エアーはこの2つの中間の42cmのカラビナ高さ、36cmの胸ベルト高さで、良好なバランスの飛行特性だ。ハスカについて触れておかなければならないのが、両手を使わないと調整できない固定バックルを使用しているために飛行中にはサイドストラップの調整ができないということである。この長所としては飛行中に調整がずれることがないと言う事だ。

 

 

 

結論

 

今、外部からの空気の流入を必要としない軽量のエアバッグ ハーネスが登場し、一般に入手できるようになった。これによってテイクオフのあとに空気が入ってきて初めてプロテクションが成立するタイプのエアバッグ ハーネスは過去のものとなった。はるかに良好なプロテクションをパイロットにもたらすこの新しいエアバッグ テクノロジーの方向性を、メーカーは追及していくべきだし、パイロットもまたこれを求めていくべきだ。ハーネスによる背中部分へのプロテクトについては、まだ改良の余地がある。スカイウオーク社はフル バック プロテクションが軽量ハーネスにおいても可能である事を示して見せた。他のメーカーもまたこのあとを追っている事と思う。

メーカー/モデル テストセンター Mサイズの重量 エネルギー吸収度設定*
Skywalk Cult C EAPR 3,6 kg 28,2 G**
Woody Valley Haska DHV 4,1 kg 24,7 G
Advance Axess 3 Air EAPR 3,6 kg 33,5 G**

* LTFのテスト基準では質量50kgの垂直ダミーを165cmの高さから落とし、ダミーに取り付けられた加速度計で衝突時に計測された重力加速度Gを記録することになっている。この数値が低いほど、それだけプロテクターのエネルギー吸収が優れていることになる。DHVにおけるテストでは外部からの空気の流入がない状態で行う。

**DHVのテストでは緊急パラシュートをつけず、緊急パラシュートコンテナを開いた状態で行う。

他のテストセンターではハーネスに緊急パラシュートをつけていたり緊急パラシュートコンテナを閉じた状態でテストしている可能性があり、その場合、DHVで得られたものとは異なる結果が導かれる可能性がある。

 

 

文章:カール・スレザック

写真:シモン・ウインクラー

日本語訳:(株)スポーツオーパカイト

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