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とても新しいカテゴリーの機体のコンセプトは市場の中で理解されるには時間がかかるようです。D認証でリリースされたアキーラと今回の軽量バージョンのシッタについても同様ですが、今回のレビューはその理解を確かに深めてくれる内容でした。それはパッシーブセイフティーとアクティブセイフティーの考え方や、認証基準との関係についても関わる理解に繋がるものです。
イカロ・パラグライダーは2015年春に新たな節目を迎えた。15周年のお祝いの中、イカロ社は2015年のテルミック・ショーで鮮やかで洒落た最新機を披露。イカロ社のウエブサイトは「まずはスタイルから」と宣言している。しっかりと鮮やかで目立つ色使い、エーデルワイスをかたどった翼のパターン、そしてブランドを高めるロゴにも力が入っている。
シッタはハイク&フライや山岳フライトを含む軽量フリースタイル機である。イカロ社は、高い安全性を持ちながら飛びを楽しめ、軽くて小さくたためる機体を求めるパイロットへ向けた翼だと述べている。この機体はEN-D認定のフリースタイル機、アキーラがベースとなっていて、アキーラと同じく運動性が高くダイナミックな機体だ。イカロ社によれば、その高い運動性のためシッタは初級者向きではないが、Bクラス機やCクラス機に乗りこなすパイロットには問題なく、一方ではバリバリのアクロ機を目指したものでもなく、あくまで軽量フリースタイル機という事である。
シッタは、18、20、22㎡と3サイズある。大きい方の2サイズはEN-D認証を受けている。20㎡サイズ機の試験報告で、ウエイトレンジの上限で飛んだ時に報告されたスパイラルダイブからの特性が、D判定の唯一の理由である。(下限では報告されていない)
18㎡サイズは65~90㎏で荷重試験を受けていて、その3.3㎏の自重は高い山へのハイクアップも苦にはならないだろう。これは現在の最軽量機と言うわけではなく、本誌の167号でテストしたエイコ20はわずか2.45㎏、最も小さいエアデザイン社のUFOシングルサーフェス機はさらに軽い1.6kgとなっているが、それぞれに得失があり、選択の判断が求められるところだ。シッタはわずかに重めだがより耐久性のあるスカイテックス32を上面生地に、27を下面生地に使用し、ラインも被覆付きなのでソートしやすく、石や草に引っかかったり絡んだりしにくく、被覆なしのラインに比べて耐久性が高い。これらの特徴は山の自然地形のテイクオフを使う機体には大切なことだ。
イカロ社では自社ブランドのハーネス ラインナップもそろえており、今回のシッタの試乗に合わせて、ありがたいことにリバーシブル ハイク&フライ ハーネスのアプスも送ってきてくれた。それではこの組み合わせについて詳しく見て、テストしてみよう。
リュックサックとしてみた時のアプスは、明るいパープルとレッドにブルーのロゴが入っていて元気な子供みたいだが、その用途に対してはトータルにしっかり取り組んでいる。リュックサックとしてとても良く出来ていて、スリムなテール形状で重さがパイロットの体にぴったりと寄り添い、パッドの行き届いたキャリーシステムに快適な腰ベルトが付いている。たくさんの調整ポイントが各所にあり、パイロットの体にしっかりと荷物の重さを添わせ、身長にあわせて肩ベルトの長さを変えられる。PGリュックサックではそうでないことも多いのだが、腰ベルトは小柄なパイロットにもちょうど合う大きさで、背中にあたる部分も良く出来ていて背の高いパイロットにも合う長さになっている。この背中の長さによって、腰ベルトがパイロットの腹を押さえることなく、しっかり腰を包み、快適だ。胸ベルトにはスライダーがあり、パイロットの体型に合わせてずらすことができる。また、そのバックルはホイッスルにもなっている。
アプスは24㎡サイズの機体まで収納できるように設計されていて、収容能力はハイク&フライに十分であり、18㎡サイズのシッタの収納ではヘルメットや予備の衣類、カメラなど余裕で入った。もしも、さらに収納スペースが欲しければ、バッグのトップに軽量のゴムひもが設置されていて、余計な衣類を留めておくことができる。また、付属の取り付け式ネットを使えば、バッグの上にヘルメットを運搬することができる。ネットの取り付けフックはとても広く配置されていて、バッグがいっぱいになっているときに大きなヘルメットを収納するときはしっかり押さえられるが、今回はバッグもゆったりで登山ヘルメットを収納したら中から落ちそうだった。
登山ロープを運搬することは考えられておらず、収納カバーはない。また軽量のゴムひもは重さのあるロープを留めるようには設計されていなし。しかし小物の運搬には、ジッパー付だったり柔軟素材だったりたくさんのポケットがあり、またこれらサイドポケットより上にストックなどの長物を取り付けられるゴムベルトもある。さらに片側には専用のウオーター ボトル ホルダーがあり、リュックサック状態でもハーネスの形態でも使えるオーター バッグ用のドリンクチューブ ホールもある。
このリュックサックは大変快適に運搬できる。コンパクトでスリムで、背中部分の構造が良くてバッグの形を完ぺきに保ち、わずらわしい荷崩れがない。パイロットの体型に合わせた調整ができ、背中部分のパッドには通気の工夫がされていて背中が汗で濡れるのを防いでくれる。バッグを締め上げるコンプレッションストラップはないが、特別に細く作られたシッタ用の収納バッグに合わせて細くカットされたバッグをさらに締め上げる必要はない。
テイクオフに着いたら、リュックサックを裏表にするだけでハーネスになる。座板はないが、成形された左右の脚ベルトがしっかりサポートしてくれる。背中部分は軽くパッドされていて、サポート性がとても良い。アルミ製の軽量バックルは中を通して組み合わせるシンプルなもので、左右の脚ベルトが離れ過ぎないように止めてくれるベルトも付けられている。全てがとても分かりやすくて使い方が素直にできているので、これなら高山で脳の働きが落ちていても間違いなく使えると確信できる。全くもって「適切な」ハーネスで、決して小さ過ぎて複雑な軽量ハーネスではない。その他のアプスの装備としては、スピードバー保持マグネット、フロントマウント パラシュートコンテナ、バックプロテクションおよび4本のベルトとバックルで取り付けるオプションのエアバッグがある。エアバッグを装着したアプスは最大荷重100㎏のEN認証を受けている。
バックプロテクションは成形された3㎝厚のフォームパッドとレキサン製の貫通防止プレートからなっている。これがハーネスの背中部分の全長にわたって入っていて、座席部分の下にまで伸びており、ジッパー付のコンパートメントに分かれて防護されている。もしこれも抜いて軽くしたいというのなら、とても簡単に取り外すことができる。もっともそれは我が家のちょっと怪しげなキッチン計量器で300gほどの軽さに過ぎないが。
エアバッグの取り付けについて一言付け加えると:取り付けは自分の家で前の晩にでもゆっくりとやっておいた方が良いだろう。テイクオフに着いてから風が悪くなりそうだとあわててやらない方が良い。登山ハーネスのようにベルトを通さなくてはならないし、取り付けがかなりキツいのでちょっと我慢がいる。リュックサックとして荷物を収納するときもエアバッグは取り付けたままにできるので、取り付けは毎回行う必要はなく、取り付け間違いを心配することなく飛べる。
すでに述べたとおり、シッタの収納バッグはアプスに合うように特別に設計されていて、通常の収納バッグよりも細くて長いので、機体をたたむときは丁寧にぴったりとたたまないとならない。収納の補助となるベルクロの機体ベルトもついている。これについてはアドバンス社のコンプレスバッグのようなサイドジッパー システムの方が収納は楽になるという気がする。重量も機体ベルトが必要でなくなるので、あまり変わらないだろう。
今回の試乗機は明るいオレンジとブルーの上面と下面で、私の目にはとても好ましいものに思えた。他にもう少しおとなしい感じのホワイトとブルーの配色のものもある。スカイテックスのクロスは撥水性と耐紫外線性能のあるコーティングが施されている。翼はわずか36セルからなり、5.1と抑えたアスペクト比を持つ。
ライザーは6mmの3本で、スプリットAとスピードシステムを持つ。インナーAは見分けやすいように被覆がレッドで、その他のものはブラックの被覆になっている。ラインは重量軽減のためソフトシャックルでライザーに接続され、防護となるネオプレンカバーで保持される。
離陸にあたってイカロ社が勧めているのは、インナーAだけを使って離陸することだが、私がこれを知ったのは初めに何本か飛んでからで、もう1本の細いラインはあまり手に感じなかったものの両方を使っての離陸も問題なかった。全ての超軽量キャノピーと同じく、風のあるテイクオフでは簡単に風を捕まえる。Aを引くとスムーズにコントロールしやすく立ち上がり、ゆっくりと飛び始める。立ち上がってくるときに左右に揺れる傾向があって、修正が必要だが、パイロットを追い越すほど傾くことはない。
この傾向を持つ理由は、飛んでみるとすぐにわかる。この機体はロール傾向を大きくとったファン リトル ウイングなのだ。ブレーク操作に対する応答性がとても高く、ほんのわずかな操作で旋回をはじめ、すぐにエネルギーを作り出す。実際、パイロットは初めての着陸進入では、意図せぬウイングオーバーに入らないようにブレーク操作の動きを小さく穏やかに保つように注意する必要があるだろう。私自身はウエイトレンジの下限で飛んだので、重めで乗った場合はさらに注意だ。飛んでいるとキャノピーは小さく感じられ、スパンの端までとても強く張られていて、良い感じでしっかりと堅い。それはまるで、純粋に楽しみのために作られた堅いサスペンションと敏感なハンドリングを持つ小型で素早い小さな空のゴーカートのようだ。
サーマリングも素晴らしい。小さく、とても運動性が高く、旋回で食い込んでいくので、小さなサーマルでも回すことができ、本当によく上がる。そのフィードバックは岩のように堅い何かにつながっているように良好で明快なもので、ブレークよりもハーネスを通じて伝わってくる。この機体でのサーマリングには大いに気に入った。そして機体が感じさせる小ささにもとても気に入った。私の試乗ではこの機体につぶれは一切起らず、つぶれそうだと感じたことすらなかったが、20㎡サイズの認証試験ではいくつかのCが報告されている。ウエイトレンジの下限では唯一、アクセラレイテッド アシメトリックス(加速された非対称つぶれ)でCがついている。
シッタの運動性の高さは、その飛行速度の高さにもかかわらず、狭いランディング場への降ろしやすさにつながっている。無風での進入速度は速いのだが、軽めで乗っていた私は、徐々に速度を落としていくにもしっかりしたフレアーをかけるにも、幅広いブレーク操作幅を感じた。イカロ社のラインナップ見分け表では、シッタに最高評価の機敏さ、ダイナミックさ、速度特性、コントロール性を与えているが、同時に着陸特性については最低評価をつけている。イカロ社によると、これはその小さな翼面積、短いブレークレンジ、フレアー域の狭さによるもので、これらは皆、重めで乗ることで強調されていくと言うことだ。
この小さな機体は、イカロ社が言う通りそのままの、小型で軽量のファン トゥー フライ機だ。ウエイトレンジ下限では特に難しい機体ではないが、とても応答性が良く、軽めで乗ったとしても簡単にオーバーコントロールに陥ってしまうので、初級者向けの機体ではない。これが重めで乗るとなったらもっと大変だが、それは、EN-C機を乗りこなしていて、スパイラルダイブからの離脱ができ、機体を暴れさせるのが大好きなクラスのパイロットにとっては、魅力的なものとなる。以上に注意してサイズを選択していけば、とてつもないファン トゥー フライが楽しめることに間違いない。
この試乗記では、チャーリー・キングは飛行総重量65㎏で、シッタ18にアプス ハーネスでフライト。
イカロ社の発表によると: シッタは登山者、アルピニスト、あるいは普段からよく飛んでいて、ハイク&フライを楽しんだり、軽量でとても小さなパッキングボリュームを持ち安全性がとても高いファン ウイングを求めるパイロットに送る機体です。こういったパイロットは皆、シッタでのフライトをとても気に入ってくれることでしょう。
用途: ハイク&フライ
パイロット レベル: カテゴリーB以上のパイロット
サイズ: S M L
翼面積(実測㎡): 18 20 22
離陸重量(kg): 60~90 75~95 80~105
セル数: 36 36 36
アスペクト比(実測) 5.1 5.1 5.1
重量(kg) 3.3 3.5 3.7
認証: (荷重試験) EN D EN D
メーカーはよくEN-A機をベースにハイク&フライ機を開発しますが、イカロ社はなぜフリースタイル機をベースにシッタを製作したのですか?
イカロ社が目指した一定の特徴を達成するためで、それは、小さい翼面積で軽量の、高いパッシブセーフティーを持つ、よく動き、機敏な機体です。そのD認証は、基本的に急角度のスパイラルのマヌーバーで3回転することによっており、これは単にダイレクトなハンドリングの結果と言えるでしょう。
なぜ18サイズ機は、他の大きめのサイズの機体のようにEN-D認証を受けていないのですか?
20サイズと22サイズはより多くのパイロットの需要が見込めますが、18サイズはそれよりも少ない販売数しか期待できないため、このサイズは認証から外しました。
18サイズのウエイトレンジが下限65㎏以下ではないのには何か理由があるのですか?軽めで乗ればより飛びやすいようですし、もっと軽いパイロットがシッタのフライトを楽しむことが出来ないのは残念です!
イカロ社の全ての機体にとって安全性は重要な課題です。イカロ社のテストパイロットで65kg以下のウエイトレンジに対応できる者がおらず、そのレンジでのテストが十分にできないため、この下限以下のウエイトレンジにはあえてしませんでした。